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夢見心地の誘惑で 6

Author: 花室 芽苳
last update Last Updated: 2025-09-24 18:25:50

「だから今日くらいは先に休みをとっておくべきだった、と」

 もちろん朝陽《あさひ》さんの言った言葉はちゃんと聞こえてます、私が知りたいのはその理由の方で。少なくとも私の知っている朝陽さんはそう簡単に仕事を休もうとする人ではないはず。

 少し前に、二人で一夜を共にした時だって……朝にはもう、ベッドに朝陽さんの姿はなかったわけだし。だから尚更、この人がそんな事を言い出した訳がわからなくて。

「朝陽さんが、今日の仕事を休みに? それは……いったい、何のために?」

「……は? そんなの、こういう時くらい鈴凪《すずな》と二人でゆっくり過ごしたいからに決まってるだろ」

「ああ、なるほど?」

 ええと……この場合、私はどうしたらいいのだろう?

 これは相当な異常事態かもしれない、朝陽さんが何故か分からないけれど壊れてる!

 何か変とかどこかが違う、なんて可愛いものじゃない。とりあえず、彼の言ってること全てがおかしい。

 どうしても朝陽さんの発言が信じられなくて、ついこんな事を聞いてしまう。

「あの〜昨夜、何かおかしな物でも食べたんじゃないですか?」

「なに言ってんだ、その逆だろう? 俺は昨晩、鈴凪を喰い損ねたんだぞ」

 ちょっと待って待って、またとんでもない事を言い出さないでよ!

 そんな朝陽さんの口を、両手で塞いでしまいたい衝動に駆られる。もう何だって、今朝の朝陽さんはこんなことばかり言うの?

 昨夜の痴態を思い出して恥ずかしくて堪らないのに、変な風に胸がドキドキしてしまう。

 とにかく、もう頭の中がゴチャゴチャでどうにかなりそうな気分だった。

「ゔぅー……ああ、そうでした! そろそろ白澤《しらさわ》さんがくる時間なので、私は部屋に戻って準備してきますね!」

 そう言って勢いよくベッドから出て、彼が止める間もなく部屋からダッシュで逃走したのだった。このままでは普段と違う朝陽さんの雰囲気に流されてしまいそうで、それが怖くて。

「チッ、上手く逃げやがって……」

 残された部屋でそう呟いた朝陽さんが、わりと楽しそうな表情をしてたなんて私が知るわけもなく。

 自室に戻ってからも、バクバクとうるさい心臓を鳴り止ませるのに必死になって。

 ……どうして、こんなにもあの夜と朝陽さんの態度が違うの?

 いつかは鵜野宮さんとヨリを戻すつもりなんでしょう? 私はその為の【仮】の婚約者のはずなの
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    「まあ、察しは付いていると思うがこっちは梨乃佳《りのか》についての調査書だ。とはいえ社長令嬢でもあるアイツについて調べられるのは、どうしても限られた内容になるんだが」「……そうでしょうね。彼女の立場上、鵜野宮《うのみや》家にとって都合の悪いことを広げるわけにはいかないでしょうし」 朝陽《あさひ》さんの言葉に白澤《しらさわ》さんが納得したように相槌を打つ、確かに鵜野宮さんは実家に力があるからそういうことが出来るんだ。私のことは全部が彼女に筒抜けでも、こちらが相手の情報を得るのは難しいのが現実で。 それでも朝陽さんが神楽《かぐら》の御曹司であるからこそ得られる情報もあるのだろう、その書類にはびっしりと文字が書かれているから。「梨乃佳は鈴凪《すずな》を陥れるため東雲《しののめ》家に取引を迫ったことが社長である父親に伝わって、今は本人のマンンションで謹慎させられているそうだ。職場ではアイツの体調不良という事になっているらしいがな」「……そう、なんですね」 あの件以降、鵜野宮さんに直接何かされる事がなくなったのはそのためだったのね。それでも流《ながれ》からの接触はあったし、これで安心出来るとは言えないだろう。 東雲君もあれからどうなったかは分からないし、これ以上は何も起こらないといいのだけど。「梨乃佳がうちの会社との取引を主に担当していたのもあって、こっちの社員も大慌てしているが……どうやら父親はアイツを海外赴任させるつもりのようだ、本人を遠くに行かせて今回のことを曖昧にしようとしてるんだろうな」「娘が娘なら、親も親……ですか。自分さえ良ければ、というところがよく似ていますね」 呆れた表情で朝陽さんと白澤さんはそう話しているが、その内容が本当ならばもう鵜野宮さんからの嫌がらせは無くなるのかと少しホッとする。彼女はきっと反省なんかしてないだろうけれど、海外赴任になればそう簡単にこちらに手出しは出来ない筈だ。 それなら良かったのではないかと思ったけど、二人の考えは違っていて……「素直に海外に行くでしょうかね、あんな我儘な女性が」「よく分かったな。アイツは父親からの指示に従わず、頑なに海外赴任を拒んでいるらしい。その上、ここ数日はマンションに怪しい男たちが出入りしているとの情報もあるくらいだ。こちらも十分気をつけるに越したことはないだろう」 海外赴任に

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